3D技術を使った活動でバズった方へのインタビュー企画をスタート! 第1回は3Dプリンタで出力した型で作ったプリン、その名も「3D『プリン』ター」でバズった大学院生の都 淳朗さん(@_3__8__5)にインタビューをしてきました。
3D「プリン」ターができるまで
──早速、3D「プリン」ターについてのお話を伺いたいです。まずは思いついたきっかけについて教えてください。
研究室で友達を待っていたときに、暇つぶしでモデリングをしていたんです。そのときそこにお花があったので、花瓶を作りました。それが結構かっこよくできて、本当にたまたまなんですけど、この花瓶の下半分のシルエットがプリンっぽいなと思ったんです。
その頃ちょうど3Dプリンターでお寿司を作る事例を見ていて、食べ物と3Dプリンターを絡めるのはおもしろいなと思ったのと、「プリンターとプリンってダジャレじゃん」って気付いてこれはいけるぞと。
最初は試作があまり上手くいかなかったんですけど、失敗作をTwitterに公開したら意外と反応がよかったんです。100いいねとかついて。でも暇つぶしでやってただけなんで、1ヶ月くらい放置してました。
そのとき大村 卓さん(@trialanderror50)というプロダクトデザイナーの方のツイッターを見たら、3Dプリンターで企業のロゴを使ってノベルティを作るという取り組みをしていたんです。これって続けやすいしおもしろいし、作ってくれた企業の人も嬉しいだろうと思って、「やられた!」と思ったんですよ。そのときプリンを思い出して、ちゃんと作り出した感じですね。
──そんな経緯があったんですね。一番難しかったことは何ですか?
型の試作ですね。型はふたつに割れてるんですけど、プリンは固める前は液体なので汁漏れしてこぼれないかっていう点が難しかったです。
まず、張り合わせたときに隙間ができないようにやすりで削って整えてあげて、プリンの液体を入れる前に型を防水ガムテーブで貼り合わせるんですよ。それだけだとまだ汁漏れしてくるので、型のパーティングラインのところにバターを塗るんです。油だから、水分を弾くかなと思って。プリンなので水よりもドロっとしてることもあり、それでうまくいきました。
──個人的には「令和」という型も印象的でした。
「令和」は結構大変でしたね。型は既存のフォントを使ってそれを立体にして作ったんですけど、文字だから形が複雑ですし、抜いたときに自立させるのが難しかったです。特に「令」の下の部分が難しくて、失敗したものと成功したものと比べると微妙に太さと高さが違うんですよ。
本当は明朝体っぽくしたかったんですけど、それだと細すぎたのでゴシックは絶対だと思って。最初はぼろぼろの状態でできたんですけど、これは投稿したくないなと思って作り直したりして。結果としていろいろ続けやすいコンテンツのベースができたと思います。
──こんなに少しの差で違うんですね。他にはどういったものが難しかったですか?
結構失敗作もあるんですよ。例えば、株式会社メルタの東さんが作成したバーチャルろくろという誰でも簡単に自分の手で器の3Dモデルが作れるシステムを使わせてもらって作った型があるんですけど、最初は形に無理がありすぎて失敗しました。
山型の反対、上に向かって広がっていくような形状は自重で倒れちゃって失敗しやすかったです。ユニークな形のプリンの方がおもしろいと思ってチャレンジしたんですけど、結局山型がいいってことがわかりました。
あとは高さがあると、先端が折れちゃうので6、7センチくらいがベストですね。プリンのおもしろいところは型の形通りにならないところなんですよ。型から抜いたら自重である程度潰れちゃうんで。成功するかどうかのハラハラもありますし。
──なるほど。プリン液もご自分で作ったんですか?
そうですね、レシピも結構こだわってるんですよ。最初はクックパッドで見つけたレシピで作ったんですけど、崩れやすかったからゼラチンを入れてみたり。いっぱい試作するのでその分食べなきゃいけないから砂糖を控えめにしたり。ゼラチンは強度を求めて入れてたんですけど、揺れの方に良い影響が出ましたね。ゼリーに近付くというか、プルプルするので。
ちなみによく「ゼリーで作っても面白いんじゃないか」と言われるんですけど、3D『プリン』ターで『プリン』だから面白いんですよね。
3Dプリンターの出会いが人生の転機
──3D「プリン」ターがバズった後の反響ってあったんですか?
尊敬するクリエイターの方からTwitterでいいねがきたり、企業の方との面談の場でこの話をすると面接官の方にも認知されていたり。あとデザインカレッジっていう学生のデザイン団体があるんですけど、そこからオファーがきてイベントで登壇しました。
──すごいですね。では3D「プリン」ターで今後試したいことはありますか?
ちょっといろいろネタ寄りのことを考えていて、身の回りにあるものをプリンに変換するっていうのもやってみようかと考え中です。今までやっていたのは、「こういう形のプリンがあってもいいんじゃない?」みたいな再定義系でしたが、今後は変換系もやってみようと思ってます。
──ここからは3D「プリン」ター以外の話も聞かせてください。そもそも3Dプリンターとの出会いは何でしょうか?
僕は今でこそ3Dプリンターが大好きなんですけど、初めて触ったのは大学4年生のときです。当時は就活もしていたんですけど、いろいろな迷いがあって、今就職しても幸せにならないなと悩んでいました。自分の得意分野を考えたときに、際立った何かがないっていうコンプレックスもあって。
そんなときに研究室にあった3Dプリンターを触って、「こんなおもしろいものがあったのか!」と。今就職したらこんなにまとまった時間でものづくりする機会がないと思って、進学することにしたんです。そこから1年以上3Dプリンターでものづくりを続けられたんで、ある意味3Dプリンターに救われました。
──普段からいろいろ制作活動されていると思うんですが、アイデアのヒントはどこから得ているんですか? 最近見つけた良いデザインもあれば教えてほしいです。
四六時中、何を作ったらおもしろいか考えているので、生きているだけで身の回りが全部ヒントみたいなところはあります。プリンの場合はそのへんを歩いているときに、この形がプリンになったらおもしろいかなと考えていました。あと僕はすごいメモ魔なので、電車で移動してるときも結構いろいろアイデア出したりしてます。noteの内容とか、コンペのアイデアとか。
最近見つけた良いデザインは、中国へ行ったときに見つけた黒いパイロンです。赤で円錐のカラーコーンが一般的ですよね。黒だと見づらいし、意味ないじゃないですか。でもこれ上の部分が取っ手になってるんですよ。色の面では使い勝手が悪いとは思うんですけど、おもしろいなと思いました。
あとは、最近いつも腰にメジャーをつけているんですけど、これのデザインもかわいいんですよね。3Dプリンター使うときのスケール感を測るために便利なんです。意外と3Dプリンター以外でも使えて、サイズ感を見るのに役立ってます。
▲ 黒いパイロンとメジャー
100のいいねより身近な人の一言がモチベーション
──制作に詰まったときの対処法や、ものづくりのモチベーションは何でしょうか?
制作に詰まったときは、一度離れて違うものを作ります。それか、良いコンテンツに触れるか。いろいろなデザインコンペにも挑戦しているんですが、テーマが難しくて結構詰まっちゃいますね。そういうときは本とか映画とか良いコンテンツに触れて心に栄養を与えてます。
プリンの話なんですけど、3Dプリンターで作った型は一度に2種類くらいしか試さないのでプリン液が結構余るんです。だから普通の容器でもプリンを作って、研究室の人に配ると喜んでくれるんですよ。Twitterに載せたら反応してもらえるし、いろんな人を楽しませることができたので思った以上にハマりました。
ネットの反応が見れるのも嬉しいんですけど、身近な人の声が一番モチベーションになります。100のいいねよりも、「あれよかったよ」「おいしかったよ」の一言の方が嬉しいです。
──最後に、今後やりたいことや、どんなクリエイターを目指しているのか教えてください。
ジャンルにこだわらず、いろいろなものを作りたいですね。3Dプリンターのいいところって、いろいろな分野をアップデートできるところだと思うんです。でも、職人さんがいる分野に踏み込んじゃうと嫌われるかもしれないのでその距離感も考えたいです。例えば、僕の3D「プリン」ターもパティシエさんから見たら、「味じゃなくて形で勝負するなんて邪道だ!」と思われるかもしれないし。
僕は小さい頃からずっとものづくりをしていて、今もそれの延長としてやっているので、これからも自分が作りたいものを作って周りの人が喜んでくれると嬉しいです。その手法として3Dプリンターは個人での自由度も高いし、いろいろできていいなと思ってます。
ありがとうございました。これからの活躍も楽しみです。ぜひまたお話聞かせてくださいね!
都さんのnoteでは、プリン作りに関する話がこのインタビューとは別角度から書かれています。そちらも要チェック!
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