Epic Gamesは、最新のゲームエンジン『Unreal Engine 5.7』を正式にリリースしました。
このバージョンは、ゲーム開発にとどまらず、オフラインアニメーション、映像制作、建築ビジュアライゼーションなど、CG業界全体で活用できる高機能なプラットフォームとして注目を集めています。
今回のアップデートでは、Procedural Content Generation(手続き型コンテンツ生成)フレームワークや、新しいマテリアル表現を可能にするSubstrateシステムといった主要機能が、プロダクション環境でも利用可能な完成度に到達しました。
本記事では、ゲームプログラマーや開発者ではなく、CGアーティストやVFXクリエイターの視点から見たUnreal Engine 5.7の注目ポイントを5つ厳選して解説します。
3D植物の編集機能やMetaHumanの改良点など、映像表現に直結する内容にフォーカスしています。
記事の後半では、その他の機能改善や細かな変更点についてもまとめていますので、最新版Unreal Engineの全体像を把握したい方はぜひご覧ください。
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- 1.Procedural Vegetation Editor: 独自のカスタム Nanite 対応樹木を作成
- 2.MetaHumans:Windows・Mac・Linux対応で進化したMetaHuman制作環境
- 3.Morph Target Viewer:Unreal Engine 5上でブレンドシェイプを直接確認・操作可能に
- 4.Improved retargeting:キャラクター体格差に対応したアニメーションリターゲット機能の進化
- 5.AI Assistant:AIアシスタントによる自然言語対応の技術サポート
- Unreal Engine5.7その他のコアツールセットのアップデート
- 対応環境とライセンス情報
1.Procedural Vegetation Editor: 独自のカスタム Nanite 対応樹木を作成
Unreal Engineの手続き型コンテンツ生成システム「PCG」は、バージョン5.7で正式リリースが可能になりました。PCGは、バイオーム単位からワールド全体に至るまで、幅広いスケールの環境を動的に構築するための強力なフレームワークです。
このPCGはUnreal Engine 5.2で初登場し、当時も注目を集めました。今回紹介するのは、その中核技術を活用した新たな試みとして登場した「Procedural Vegetation Editor」です。
このエディタは、PCGノードベースの構造を活用して、Unreal Engine上でアーティストが独自の3D樹木を手続き的に生成できるようにする実験的なプラグインです。SpeedTreeのような外部ソフトで一からモデリングを行う手法とは異なり、Quixel Megaplants(Fabで無料提供)といった既存アセットをベースにカスタマイズを行うスタイルを採用しています。
アセットのインポート後は、重力やスケーリング、カーブの演算処理を適用することで樹木全体のフォルムを調整できます。さらに、各パラメータを細かく操作することで、枝の広がりや葉の密度といったディテールも自在に変更可能です。
作成した樹木は、静的メッシュまたはスケルタルメッシュとして出力することができ、Unreal Engine 5.7に実装された実験的な「Nanite Foliage」システムにも対応しています。このシステムでは、手続き型の風アニメーションを設定することも可能です。
ノードベースの設計により、ベースとなるグラフに少し手を加えるだけで複数バリエーションの樹木を効率良く作り出せる点も、大きな魅力の一つです。
2.MetaHumans:Windows・Mac・Linux対応で進化したMetaHuman制作環境
Unreal Engine 5.7ではMetaHumansに関する機能が大幅に強化されており、注目すべき改善点のひとつが、MetaHuman CreatorがWindowsだけでなくmacOSやLinuxにも対応した点です。
Unreal Engine 5.6以降、このツールはUnreal Editorに統合されており、より多くの環境でのキャラクター制作が可能になりました。
さらに、MetaHumanの生成プロセスを自動化できる新たなAPIが導入されており、Pythonスクリプトやブループリントを使っての制御が行えるようになっています。
顔の表情キャプチャに関しても進化が見られ、Epic Gamesが提供する「Live Link Face」アプリがiOS・Android両方でより多様なカメラ機器に対応しました。
たとえば、iPhoneの内蔵カメラはもちろん、iPadやAndroid端末にUSB-C外部カメラを接続して使用することも可能です。
また、公式のリリースノートには記載されていないものの、Epicのオンライン製品ロードマップには「Rig Mapper」という実験的な機能も紹介されています。
このツールを活用すれば、AppleのARKitを用いたアニメーションをMetaHumanに簡単にリターゲットできるほか、MetaHuman Animatorで生成されたフェイシャルアニメーションをARKitキャラクターへ転送することもできます。
このように、MetaHumansはOSの垣根を超えて制作環境が整備され、アニメーションの表現力も大きく向上しています。
3.Morph Target Viewer:Unreal Engine 5上でブレンドシェイプを直接確認・操作可能に
Unreal Engine 5.6では、スケルタルメッシュエディタにおいて補正モーフやフェイシャルブレンドシェイプのスカルプト機能が搭載されましたが、5.7ではその機能がさらに進化し、作業効率を高める新しいワークフローが導入されています。
とくにキャラクターのリギング作業において、ボーン配置やウェイトペイント、ブレンドシェイプの編集といった各工程を瞬時に切り替えられるようになり、編集プロセスの連携がスムーズになりました。
新たに追加されたモーフターゲットビューアーを活用すれば、キャラクターに適用された全てのモーフターゲットを一覧表示でき、各ターゲットの強度をウェイトスライダーで簡単に調整できます。
この機能により、表情や変形の細かな調整がリアルタイムで可能になります。
4.Improved retargeting:キャラクター体格差に対応したアニメーションリターゲット機能の進化
UnrealEngine5.7ではアニメーション制作者向けに、ワークフローを大幅に改善する複数の新機能が導入されています。中でも注目されるのが、異なる体格のキャラクター間でのモーション転送をより自然に行えるリターゲット関連の強化です。
まず、空間認識型リターゲット機能が加わったことで、巨体キャラと小型キャラのように骨格の比率が大きく異なるケースでも、自己干渉を抑えた滑らかな動きの再現が可能となりました。
さらに、IKリターゲターのアップデートにより、以下のような細かな調整も行えるようになっています。
足元の安定化:床に近い足の位置を保つための床拘束機能が組み込まれ、モーションの自然さが向上。
これらの機能によって、たとえば巨人からドワーフへの極端なアニメーション変換でも、手動で修正する手間が大幅に軽減されることが期待できます。
体格差の大きいキャラクター間でも高精度なアニメーション移行が実現可能になり、ゲーム制作や映像制作の現場において大きな武器となるでしょう。
5.AI Assistant:AIアシスタントによる自然言語対応の技術サポート
ゲーム開発やビジュアル制作に携わるアーティストにとって、操作や仕様に関する疑問をすぐに解消できる機能として「AIアシスタント」が登場しました。
このツールは、Unityの「Assistant」に似た機能を持ち、ChatGPTのような大規模言語モデル(LLM)を活用することで、ユーザーの質問に自然な言葉で応答します。
プログラマーであればコード生成が主な用途となりますが、アーティストにとっては、技術的なトラブルや手順に関する疑問をスムーズに解決する手段として活用できます。
AIアシスタントはUnreal Editor内の専用パネルからアクセスでき、平易な日本語での質問に対して、段階的に操作手順や解決策を提示してくれます。
組み込みのAIは、Epicが提供する開発者向けオンラインドキュメントの検索にも使われているモデルがベースとなっており、プロジェクト内の文脈も把握したうえで的確なサポートが可能です。
Unreal Engine5.7その他のコアツールセットのアップデート
Substrateが制作対応となり、BSDFベースのモジュール型マテリアル構築が可能になりました。
・ライティング機能の拡張
MegaLightsがベータ版として提供され、指向性ライトやNiagaraパーティクルライト、半透明オブジェクト、ヘア表現に対応しました。
・レンダリング性能の改善
Naniteが一人称視点のレンダリングに対応し、SMAAによる高精度なアンチエイリアスも試験的にサポートされています。
・リギングツールの進化
Control Rigに依存関係を可視化できる新ビューが追加され、複雑なセットアップの管理がより直感的になりました。
・アニメーションワークフローの改善
選択セットや制約ウィンドウの統合、メディアビューアーの刷新など、操作性と効率性が向上しています。
・シミュレーション機能の改良
Chaosシステム(Destruction、Cloth、Hair、Fluids)とVisual Debuggerの各機能に細かなアップデートが加えられました。
・モーショングラフィックス機能の拡張
Text3Dがリッチテキストに対応し、Unreal Engine 5.4で導入されたモーションデザインツールが本格利用可能になりました。
・VFX制作の支援機能
Movie Render Graphでファイル命名の柔軟性が向上し、レンダリングレイヤーごとのEXRメタデータ対応でNukeとの連携も強化されています。
・ビジュアライゼーションの最適化
複雑なモデル確認用の新ビューポートモードと、正投影ビューでのクリッピングプレーン対応が向上しました。
・バーチャルプロダクション機能の復活
Composureが再導入され、リアルタイムのレイヤー合成に再び対応しています。
・モーションキャプチャの操作性向上
Live Linkでのストリームの一時停止・再開が可能になり、ビューポートでのプレビューも直接行えるようになりました。
・開発支援ツールの拡張
インクリメンタルクッキングやビルドヘルスダッシュボードに新機能が追加され、開発効率がさらに向上しています。
対応環境とライセンス情報
Unreal Engine 5.7は、64ビット版のWindows、macOS、およびLinuxに対応しており、幅広い開発環境で利用可能です。
ゲーム以外の用途であれば、年間売上が100万ドル(約1億5,000万円)未満の個人や企業に対しては、ソフトウェアを無償で利用できます。
一方、大規模な開発スタジオなどの場合は、TwinmotionやRealityCaptureを含むサブスクリプションライセンスが必要となり、1ユーザーあたり年間1,850ドル(約27万7,500円)の費用が発生します。
なお、このエンジンを使用して制作されたゲームに関しては、収益が最初に100万ドル(約1億5,000万円)を超えた時点から、その後の収益に対して5%のロイヤリティがEpic Gamesに支払われる仕組みです。
Unreal Engine 5.7についての詳しい情報は、Epic Gamesのブログでご確認ください。
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