BlenderFoundationは、VFXやアニメーション制作、ゲーム開発、建築ビジュアライゼーションなどに対応したオープンソース3Dソフト「Blender」の最新メジャーアップデートとなる『Blender5.0』を発表しました。
今回のバージョンは、今後2年間にわたる新たなリリースサイクルの第一弾に位置づけられており、3Dモデリング、アニメーション、テクスチャ作成、レンダリングといった主要ツールに数多くの変更が加えられた包括的なアップデートとなっています。
この記事では、ジオメトリノードの強化やカラー管理の改善、新たに追加されたコンポジターモディファイアなど、注目すべき5つの重要ポイントを取り上げ、Blender5.0の進化を詳しく解説します。
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1.Blender5.0

ジオメトリノードはBlenderの手続き型モデリングとレイアウト作業を統合的に扱う仕組みで、近年のアップデートで特に注目を集めています。
Blender5.0ではボリュームデータの扱いが大幅に強化され、従来のようにメッシュやポイントクラウドへ変換する手間を挟まずに、ボリュームそのものをノード上で編集できるようになりました。
新たに導入されたボリュームグリッドデータタイプと専用グリッドソケット、さらに多数の追加ノードによって、ボリューム情報の直接操作がより柔軟で実践的になっています。
この拡張によって、流体表現や科学可視化の制作フローが大きく前進し、OpenVDB形式に対応しているため他のDCCツールともスムーズに互換性を持てます。さらにSDF(Signed Distance Function・符号付き距離関数)の編集にも対応し、メッシュやポイントクラウドをSDFグリッドへ変換したうえでブール演算を行うことで、複雑な造形を効率的に構築できる環境が整いました。
プロシージャルモデリングの表現力を高めたいクリエイターにとって、Blender5.0のジオメトリノードは重要な武器となります。
2.ジオメトリノードベースのモディファイアでオブジェクトを高速に分散

ジオメトリノードを基盤としたモディファイアが拡張され、Blenderのモデリング作業を効率化する機能が充実しました。
今回追加された6種類の新モディファイアは、オブジェクト配置や複製をより柔軟に扱える構造となっており、レイアウト作業やモーショングラフィックスにも適しています。
新規の配列モディファイアは、従来型の配列機能を踏襲しつつ、曲線に沿った複製だけでなく円形パターンの生成にも対応しています。
ビュー上のコントロールギズモで配置を直接調整でき、ジオメトリノード由来の拡張性によりカスタマイズの幅も広がりました。
さらに、ScatteronSurfaceやInstanceonElementsを利用すると、別メッシュのポイント・エッジ・ポリゴンへ複製オブジェクトを自動的に配置できます。環境オブジェクトの散布や複雑なディテール生成にも有効です。
加えて、インスタンスのランダム化を行うモディファイアを組み合わせれば、位置や回転、スケールにばらつきを加え、自然な造形表現を再現しやすくなります。
シェーディング面では、MetallicBSDFとPrincipledBSDFに薄膜干渉の表現が導入され、金属表面に発生する酸化膜のような虹色の光沢をリアルに描写できるようになりました。
これらの追加要素により、モデリングからレンダリングまでの表現力が総合的に強化されています。
3.Cyclesのボリューム表現強化とSSS改善および金属虹彩の再現精度向上

Blenderの主要レンダラーであるCyclesは、5.0アップデートで描画品質を大きく高める機能強化が行われています。まず、4.2で導入された薄膜干渉による虹彩表現がMetallicBSDFにも対応し、加熱金属の酸化膜が浮かび上がるようなリアルな質感を再現できるようになりました。
サブサーフェス領域の計算精度も向上しており、ランダムウォーク方式の改良によって、皮膚や大理石といった半透明素材内部での光の散乱挙動がより自然に描かれます。質感表現の説得力が増し、キャラクターや造形物の仕上がりが一段と滑らかになります。
最も大きな進化はボリュームレンダリングです。新たにヌル散乱を基本としたアンバイアス方式が標準となり、従来のレイマーチングに依存した手法よりも調整項目が少なく、複数ボリュームが重なる場面で起きやすかったノイズや破綻が大幅に抑えられています。
さらに、煙や炎のボリューム表現にはOpenVDBではなくNanoVDBが採用され、必要メモリの削減が期待できます。複雑なシーンを扱う際のパフォーマンス改善にも貢献しています。
4.シーケンサー内でコンポジターモディファイアを使用して合成

Blender5.0では3D制作だけでなく、合成機能とシーケンサーを統合した編集環境が強化されています。
従来の多くのDCCソフトウェアとは異なり、Blenderはモデリングやアニメーションに加えて独自のコンポジット機能とビデオエディターを内蔵されているため、映像制作全体を一つの環境で完結できます。
最新版では両方のツールがアップデートされ、特に注目されているのがシーケンサー内でコンポジターモディファイアを扱えるようになったことが挙げられます。
新しいコンポジターモディファイアを使うと、シーケンサー上でノードベースの合成処理を直接適用し、その場で編集できます。
モーショングラフィック制作者やVFX編集者にとって移動作業の手間が減り、編集工程がより効率的になります。
現段階ではシーケンサー側がGPUコンポジターではなくCPUコンポジターを使用していますが、将来的なアップデートで改善される可能性があります。
さらにBlender5.0のカラーマネジメントも拡張され、Rec.2020やACEScgといった広色域スペースに対応し、従来のRec.709を含む作業用カラースペースを.blendファイルで利用できるようになっています。
映像編集やVFX制作で正確な色表現を求めるユーザーにとって、Blender5.0の利用は大きなメリットとなるでしょう。
5.カラーマネジメント:ACES、HDR、広色域カラー

Blender5.0では、VFX制作の現場で扱う色管理が大幅に見直され、日常的なワークフローに直結する強化が行われています。特にACES対応の強化とHDR出力の拡張は、実制作での利便性を大きく高める内容です。
まず、ACES1.3およびACES2.0が正式にサポート対象となったことで、ACESパイプラインを利用するプロジェクトでも安定した色管理が行えるようになりました。
作業用カラースペースとしてACEScgが選択可能となり、より正確な色処理が行えます。なお、従来のBlenderと同じく標準設定はLinearRec.709です。
さらに、画像と映像の両方でHDR表示と広色域カラーの出力が利用可能になりました。
対応モニターを使用している場合は、Rec.2100PQやHLGなど、放送やYouTubeで一般的なHDR規格に沿った映像確認と書き出しが行えます。
静止画についてはRec.2020やDisplayP3など幅広い色域に対応し、PNG、JPEG、WebP、TIFF、JPEG2000といった形式で保存できます。
加えて、Blender5.0には新しいMatCap画像が複数追加され、既存のMatCapもスペキュラ成分を含む形で再調整されています。
ビューポートの見た目が向上し、モデリングやシェーディング作業の精度が高まりやすくなっています。
Blender5.0のその他アップデート内容
Blender 5.0では、数多くの進化が加えられ、制作フローがさらに効率的かつ直感的になりました。
・UI:100以上の改良が施され、テーマの作成方法も抜本的に見直し
・ジオメトリノード:バンドルとクロージャに対応、UV接線ノードを新たに追加
・シェーディングノード:バンドル・クロージャ・リピートゾーンに対応、Radial Tilingノードの追加とVoronoiテクスチャの改良
・スカルプトブラシ:サイズ・強度・ジッターにカスタムカーブ追加、筆圧対応が強化
・ベイク処理:マルチ解像度モディファイアでのnゴンおよびベクトルディスプレイスメントのサポート追加
・UV編集:同期選択がデフォルトで有効化、UVアイランドの整列・パッキング機能が強化
・リギング:ジオメトリ属性コンストレイントを新たに搭載
・アニメーションエディター:UIと操作性を改善、シェイプキーでの複数選択・ドラッグ対応
・Animation 2025:既存アニメーションシステムの置き換えは未実装
・2Dアニメーション:モーションブラーとストロークの角度制御(鋭角・平坦)をサポート
・物理システム:LZO/LZMA圧縮キャッシュを廃止し、ZSTD圧縮を採用
・Cycles:OSLカメラ用UIを新設、アダプティブサブディビジョンが正式機能として常時利用可能に
・Eevee:View Layerオーバーライド対応、NVIDIA GPUでのシェーダーコンパイルを高速化
・コンポジター:ノードツリーの.blend間再利用、新しいシェルフアセット(色収差・周辺減光)を追加
・シーケンサー:アクティブシーンに依存せず、再生・スクラブ時の自動シーン切り替えが可能に
・VR機能:移動時のスナップターンと周辺減光に対応し、VR酔いを軽減
・パイプライン統合:C++製FBXインポーターを標準化し、Alembic・BVH・glTF・OBJ・USDのIO機能を更新
.blendファイル形式:2GB超のデータブロック(数億頂点モデルなど)に対応
・互換性:Blender 2.49以前のアニメーションデータおよび2.93以前のポーズライブラリを非サポートに変更
・Python API:複数の重要な仕様変更を実施
・システム要件:Intel Macのサポートを終了、CyclesでのGPU要件を引き上げ
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