Pixarは、映像制作やアニメーション業界において高い評価を得ているプロ向けレンダリングソフト「RenderMan」の最新バージョン『RenderMan 27』を発表しました。こちらは、2025年9月27日にベータ版として公開された後、正式版としてリリースされました。
RenderMan 27は、過去10年で最も革新的なアップデートとされており、VFXやCGアニメーションの制作現場に大きな影響を与えると期待されています。今回のバージョンでは、同社のハイブリッド型レンダリングエンジン「RenderMan XPU」が大幅に強化され、インタラクティブプレビューだけでなく、最終出力用のレンダリングにも対応可能となりました。
主な進化点として、リアルタイムのノイズリダクション機能、ディープコンポジット対応のワークフロー、マットおよびホールドアウトの合成機能への対応、より柔軟なシェーディング表現、さらに複数GPUを活用したレンダリングにも対応しています。
このXPUの最新機能は、商用利用を除いた無料の非商用版RenderManでも利用可能です。
また、Blender、Houdini、Katana、Mayaといった主要な3Dソフトとのプラグイン連携にも対応しており、幅広い制作環境で導入が進むと見られています。
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最終フレームレンダリングに対応した『RenderMan XPU』が正式リリース

PixarのRenderMan 27では、レンダリングエンジン「RenderMan XPU」がついに最終フレームの出力に本格対応しました。
XPUは2021年にRenderMan 24で初登場し、以降のバージョンで段階的に強化されてきました。当初はルックデベロップメントやインタラクティブレンダリング用として位置付けられ、CPUベースのRIS(RenderMan Integrator System)よりも高速な処理が可能な選択肢として注目されていました。
しかし、XPUには最終フレームの制作に求められる一部機能が未実装という課題がありました。
RenderMan 27ではその制限が大きく解消され、これまでRISでしか対応できなかった主要なプロダクション機能のほとんどがXPUでも使用可能となりました。
制限が大きく解消されたことにより、XPUは制作現場での実用性が大きく向上し、RISとの機能差がほぼ解消されつつあります。
なお、RISも引き続きRenderMan 27で利用可能ですが、将来的にはサポート終了が予定されており、今後のプロジェクトではXPUの採用が推奨されています。
実際、Pixarもこの方針を実践しており、次回作『トイ・ストーリー5』の最終フレームレンダリングにはXPUが使用されています。
Pixarが公開しているFAQによると、XPUは多くのケースでRISより2倍から10倍の高速化が見込めるとのことです。

RenderMan27におけるXPUのVFX合成対応が大幅強化

RenderMan27では、XPUレンダリングエンジンのVFX合成機能が著しく向上したことにより、従来はRISでのみ対応していた多くの機能がXPUでも利用可能になっています。
特に視覚効果の制作現場において重要視されるのが、マットやホールドアウト、ディープ出力に対応した新たな合成機能の追加です。
新たな合成機能が追加されたことにより、複雑なVFX合成フローにおいても、XPUがより実用的な選択肢となっています。
ディープコンポジットのワークフローでは、RenderManXPUがOpenEXRのディープIDに完全対応し、OpenEXR3.0仕様に準拠したIDマニフェストの自動生成にも対応しています。
なお、マットIDを自動抽出するCryptomatte機能については、RenderMan27.0時点ではXPUに未対応ですが、Pixarは今後の27.xシリーズのアップデートでサポートを予定しています。

XPUが新たに対応、AIデノイザーとスタイライズ表現の強化
最新のRenderManでは、XPUに対して革新的な機能が拡充され、AIによる高性能デノイザーと、アートスタイル表現を可能にするStylized Looksツールが利用可能になりました。
RenderMan 25で搭載されたAIベースのテンポラルデノイザーは、複雑なライティングやマテリアル構成があるシーンでも高速なプレビューを実現し、ルック開発の効率を大幅に向上させます。
また、RenderMan 24で初登場したStylized Looks機能は、写実性にとらわれないアーティスティックな表現を可能にするツール群です。手描き風のスケッチ、コミック調、絵画のようなレンダリングなど、独自のビジュアルスタイルを作り出すことができます。
最新版のRenderMan 27では、これらのスタイライズ機能がXPUに完全対応しただけでなく、さらなる進化を遂げています。筆致のある絵画風スタイルに加え、ライン描写、クロスハッチング、トゥーンシェーディングなど、多彩なエフェクトが新たに追加されています。
XPU:高度なシェーディングとライティング機能に対応
RenderManのXPUでは、これまでRISレンダーエンジンでしか利用できなかった多くのシェーディング機能が新たにサポートされるようになりました。ルックデベロップメントにおいても、より柔軟な表現が可能となっています。
具体的には、Open Shading Language(OSL)のディスプレイフィルターに完全対応し、サンプルフィルターについても一部機能が有効化されています。また、getattribute()による属性取得についても、RIS同様に広範囲で利用できるよう改善されています。
さらに、マテリアル構造の進化にも注目です。RenderMan27.0では、MaterialX Lamaが早期アクセス段階にあり、将来的には27系リリース内での完全対応が予定されています。なお、XPUにおける一般的なMaterialXのサポートは現在も開発中であり、正式な導入にはもう少し時間を要する見込みです。
そのほかの強化ポイントとしては、マテリアルの継承を活かした階層的なインスタンス化、サブサーフェススキャタリング、単一サーフェスによるガラスやボリュームの光散乱処理、そしてヘアレンダリングの品質向上などが挙げられます。
ライティング面では、XPUがメッシュライトに完全対応したことで、内部ボリュームの集光表現も可能になりました。これにより、結晶構造や濁った液体といった複雑なマテリアルも、より現実的かつ精細にレンダリングできます。
XPUによるチェックポイント機能とマルチGPUレンダリングの強化
最新のXPUでは、レンダリングワークフローに関する複数の重要な機能が強化されています。特に注目すべきは、チェックポイント機能の実装とマルチGPU対応の進化です。
XPUは、レンダリング途中のフレームを一時保存する「チェックポイント」の出力に対応しました。これにより、予期せぬ中断が発生した場合でも、最初から再計算せずに作業を再開でき、時間のロスを最小限に抑えつつ、制作全体の効率向上が図れます。
さらに、XPUはハイブリッドモードとGPU専用モードのいずれにおいても複数GPUの同時利用が可能になりました。GPUファームを活用する環境では、搭載されているGPUリソースをフル活用できるようになり、処理速度とパフォーマンスが大きく向上します。
ただし、GPUレンダリングに伴うメモリの制約は依然として存在します。各GPUは同一仕様である必要があり、使用する3DシーンはすべてのGPUが保持できるメモリ容量内に収まっていることが前提です。
RenderMan 27の制限
最終フレームのレンダリングにXPUを活用する際には、現時点でいくつかの制約が存在します。
XPUはすでに高い機能性を備えており、Pixarがスタジオレベルの最終品質レンダリングへ本格導入を検討できる段階に達しています。
ただし、RenderMan 27には一部未対応の機能や制限も残っているのが現状です。
制限①複数のライトが多いシーンではRISの方が有利
RenderMan27では、シーン内に多数のライトを配置した場合の処理に制限があります。
ライトの数が数百以下であれば、XPUは従来のRIS方式よりも高速に収束します。しかし、ライト数がそれ以上になると、XPUよりRISの方が高いレンダリング性能を発揮します。照明の多いシーンを扱う際には、この点を考慮した選択が求められます。
制限②複雑な光の表現にはXPUよりRISが適している
XPUは、双方向パストレーシングやフォトンマッピングといった高度な光輸送アルゴリズムには対応していません。
そのため、水中コースティクスなど、複雑で高精度な照明表現が必要な場合にはRISを使用するのが最適です。用途に応じてXPUとRISを使い分けることで、より理想的なビジュアルを実現できます。
制限③XPUは一部機能やジオメトリに未対応
現時点でXPUは、ベイク処理ワークフローに直接対応していません。
ただし、RISでベイクした結果をXPUで使用する方法は現実的な代替手段となります。
また、NURBSや2次曲面といった一部のジオメトリ形式には非対応ですが、エンタメ分野の多くの制作では特に支障はないと考えられます。
加えて、XPUはNVIDIA製GPUが必要で、対応OSはWindowsとLinuxに限定されています。なお、今後のRenderMan27.xではApple Silicon搭載Macへの対応も予定されていますが、当面はRISモードでの運用となる見込みです。
制限④複雑な光の表現にはXPUよりRISが適している
XPUは、双方向パストレーシングやフォトンマッピングといった高度な光輸送アルゴリズムには対応していません。
そのため、水中コースティクスなど、複雑で高精度な照明表現が必要な場合にはRISを使用するのが最適です。用途に応じてXPUとRISを使い分けることで、より理想的なビジュアルを実現できます。
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