こんにちは、モデログ編集部です。この度、モデログの新企画として3Dプリンターや3Dモデリング業界で働く方々にインタビューをすることになりました!!
記念すべき第1回はクリーク・アンド・リバー社におじゃまして、VR事業部の吉岡さんにお話をうかがいました。
吉岡 さん
佐賀県出身。小学校5年生のときにテレビで見た「NHKロボコン」でものづくりに目覚める。大学時代はロボコンに熱中しつつ、3Dモデルや3Dプリンターを研究。クリーク・アンド・リバー社への転職は4日で決まる。現在はVR事業部で活躍中。
クリーク・アンド・リバーってどんな会社?
──クリークのスタートはテレビ関係だったとか?
もともとはテレビ業界のADさんの派遣からスタートした会社です。なぜ、そこからやりだしたのかというと(代表の)井川さん自体がテレビマンで。労働環境が悪い業界でしたので、そこを労働改革をするところから始まっています。クリエイターの価値向上、環境がどの業界に行っても悪い。そこを改善するためにいろんな業界のプロフェッショナルの派遣会社という切り口でやってきました。
私がいるVRの部署ではいろんな業種で使ってもらうVRをやっています。VRのハードウェア、コンテンツの開発をしていて、コンテンツは3Dアニメーション、シミュレーター、実写などいろいろあります。それを医療の現場、教育の現場、企業研修、イベント、プロモーションといった様々な分野で使っていただいています。
使ってもらうだけではなくて、それを使ったシステムのインフラの保守と運用サポートもしていますし、場合によってはお客さんのところへ開発ができる人間の派遣・出向、人材の紹介などもやっています。VR界隈の何でも屋みたいなかんじなんです。
VRのハードは中国のアイデアレンズ社から子会社のVRJapanが輸入総代理として輸入しているんですが、輸入するだけではなくてこちらで開発段階から仕様面で協議して「こうしなければいけないんじゃないの」とセッションしながら作らせていただいています。国内でハード、映像、実写、CG、プログラムも全部これだけやる会社はおそらくクリークぐらいですね。
クリーク・アンド・リバーの強み
母体が人材の会社なのでエンジニアの派遣やVRができるディレクターを派遣して、『お客さんの会社のなかでVR事業を作っていくお手伝い』をやっています。また、一番キャッチーなところでいうと、せきぐちあいみさんのマネジメントもおこなわせていただいています。
──そうなんですか。
(せきぐちさんは)クリーク・アンド・リバー所属のタレントさんです。彼女のような『The 特殊人材』の派遣もやらせていただいています。展示会やイベント、大手さんのポップアップショップのデザインを描いたり、イベントのショーみたいなことをやったりされていますね。
総じてうちの強みはいろんな専門人材と自社開発を組み合わせたサービスを提供できるところです。また、その部分だけではないのでお客さんに強みがあれば、お客さんに強みがあるところをお客さんに任せつつそれ以外のところをうちのプロフェッショナルで対応しています。
クリーク・アンド・リバーの VR 事業について
──ちなみに、クリーク・アンド・リバー社さんってVRに一番力を入れていれているんですか?
VRは新しい分野として非常に力を入れています。ただ、VRの部門が入っているデジタルコンテンツグループの中で考えるんだったら、他の部門の売り上げの方が大きいです。VRは他の部門と比べるとまだ駆け出しの段階です。今はVRという業界を広げる段階ですね。業界が広がれば市場も広がって、業界そもそものお金が膨らむので、それが今のエンジニアさんたちに入ってきます。
私たちとしてはエンジニアやプロフェッショナルの生涯の収入をあげようとしています。生涯の待遇を上げたい。エンジニアさまさま、プロフェッショナルさまさまの会社なので。彼らの評価が良くなること、状態が良くなることを目指しています。
今までの業界でプロフェッショナルをやっていくのはいいんですけど、それだけあっても横ばいなので。新しい市場を開拓することによってエンジニアやプロフェッショナルの環境を良くしようという取り組みのひとつがVRです。
──ARとか3Dプリンターとかも普通に仕事としてやったりするんですか?
ここなんですけど、うちはVRとしていますがこれはキャッチーだからいっているんです。VRの部署はARだろうがXRだろうがプロジェクションマッピングだろうがなんでもやっています。
「ソシャゲ以外のIT領域はほぼ全部やってます」というぐらい何でも屋さんです。全く関係のないIoT系デバイスとのコラボで販促イベントのプログラムを作っていますし。
VRだけをやっていくのはもったいないのでVRが空いたときには、別のことをしています。また、VRのお客さんは、VRというキャッチーなキーワードがあるからクリークを知ってそこから次の別の大きい関係になるという流れもあるんです。
今は見られない歴史資料が VR で蘇った!
──どんな会社が導入しているんですか?
思いつく業種全部やってんじゃないかな。建築やゼネコン、塾の講師の教育に使っているところもあって。教師のマナー講習で使うこともあります。
よく聞くキャッチーなところだとVRで住宅の内見。グレードの高い、一部屋数億するようなモデルルーム、マンション、タワーマンションの営業にも使っていただいてたりもします。
──用途的には例えば危険講習みたいなのが割合が多い?
危険講習や命に関わる、安全に関わることが非常に多いですね。
──体験できないから。
そう。他で体験できないことを体験させる。バーチャルの空間ではそれが一番正しい使い方だと思っているので。他で体験できないことをそれで体験させるのをやっていますね。あとは、学習に使っていただいています。楽しむに使うんじゃなくて、安全な使い方を学ぶだったり、命の守り方を学ぶだったり。
また、歴史資料は見れないものが多いので、それを擬似的に体験するのもあります。例えば、大宮の鉄道博物館に今のものよりひとつ前の「御料列車」。皇族の方が乗られる専用列車ですね。列車は傷んでいて人が入れないんですけど、それを24Kで撮影して、歴史資料的なVR映像、VR画像を撮影して見られるようにしました。どちらかというと、知的なところで使われるケースがうちの会社のケースとしては圧倒的に多いです。
VR 体験による学習効果とは
──VRを初めてやったときに思ったのは、見るというよりかは体験じゃないですか。
そうですね。
──経験値としてテレビを見るのとぜんぜん違う。
今おっしゃった表現が正しい、というかまさにそれで。2Dの映像は、「見た」という記憶になるんですけど、VRの記憶は「体験」になるんですよね。
例えば、手をバツンと切るような凄いグロテスクな映像を見たときに、2Dだと「あ〜怖いな〜」っていう記憶になるんですけど、VRでバンってやると自分の身体に起きたような体験を錯覚しちゃうので、いざ現場に立ったときにその機械を見るとここらへん(手のあたりが)ゾクゾクするんですよ。記憶の残り方の質がぜんぜん違うのでそこが学習効果につながるし、安全教育に非常につながる。
「 VR 酔い 」は克服できる
──頭につけるVRをやったことがあるんですけど、実際の見え方とゴーグルを通した見え方がだいぶ違うっていうのがあって。それを克服したらいいと思うんですけど、今の段階だとなんか酔いそうなんです。
そうですね。まだ出だしの機材なので、時間がある程度解決してくれると思います。今「酔う」といわれたことでいうと、酔います。酔うんですけど、酔うってのはふたつのパターンがあって、人間の特性の場合とコンテンツが悪い場合があるんです。
2016年に「VR元年だ」といわれて2017年、2018年にガーッと出たときって、作りが悪い、粗悪なコンテンツがいっぱい作られていて。瞳孔間距離やチューニングがあってないだとかでとても酔うコンテンツが多かったんですよ。あとは、視聴デバイスが発展途上なので、安い機種は酔いやすい物もありました。
逆にうちからすると、VRの出だしに「酔う」というイメージがついてしまったことは、すごいネガティブなことなので、そこは徹底して「絶対に酔わない」コンテンツをつくる。つくることに関しては酔わないものを作るように努力しています。
けっこうあれで酔うっていうイメージついてVRから避けられちゃうとか、一定数出ちゃっているんですね。
──「VR酔い」って言葉がまずできましたもんね。
そうなんです。だから、あれで酔う人、過去の悪いコンテンツで酔っちゃった人の悪い体験を変えるのはなかなか大変なんですよ。これ以上そういう人たちを生まないようにするために粗悪なコンテンツをつくらないようにしています。
ちなみに、私は酔いやすい人なので、うちのコンテンツは一旦私が見て酔うか、酔わないかっていう、
──酔いチェック。
モルモットに1回されて出荷されているますので。
営業とエンジニアの 『 通訳 』
──自然に次の内容に繋がりましたね。社内では何をやっているか。
そうですね。
──モルモットで(笑)。
モルモットもやってますね。私が社内でやっていることといいますと、うちの場合、営業と開発があるんですけど、私はどちらかというとここの間に立って『通訳』しています。
VRって日々新しいものがたくさん出てくるところなので、情報がどんどん出ていってる。でも、営業側はそれにずっと追いつく、自身で追いつくには限界があります。私も最新情報を追いつつ、できることとできないことを日々アップデートします。そして、営業がお客さんへ対応する際に「こういうことできますよ」と提案できるような形になるために、私が情報を蓄積してますし、エンジニアの情報ももちろん蓄積してます。
ただ、このエンジニアの情報を営業にそのまま伝えたところで、会話にならないんですよ。そこを私が営業にわかるようにしたり、営業が言っていることをエンジニアにわかるようにしたりと『通訳』みたいなことをやっています。それだけではお金がもらえないので、ちゃんとディレクションとか案件の進行なんかももろんやっていますよ。
あとは、他にもカスタマーサポートとか機材のメンテナンスの対応しています。お客さんが新しい使い方に気づくことがあるので、そういうのをメーカー側に報告して次の機械にブラッシュアップすることもやっていますね。
VR の未来
VRに関してだとVRの普及というのは機材の小型化、軽量化、低価格化、これが実現しないと本当の意味での普及はしないかな。みんなが持ってるスマホみたいな世界観は実現しないと思ってます。
ただ、学校教育や会社の教育には確実に入ってきているので、2020年といわずに今年中、来年中ぐらいには、業者会社さんの中でよく目にするデバイスになってくるんじゃないかと思います。うちの導入実績から考えても着実に増えていっています。
ただ、少し勘違いされやすいんですが、コンシューマー向けのゲームセンターが撤退したり、VRのゲーム作っている会社は倒産したりしていますね。
去年の末ぐらいに色々あったので、「VR業界ダメじゃん」と思われるケースがありますが、「実はビジネス向けで結構使われていますよ」という認知が足りてないんです。そこらへんは広めていきたいなと思っているところです。スタートは教育とか体験。体験が重要な学習要素、そういうキーワードが当てはまるところで着実に広がっている。
──VRゴーグルの見た目ってどうにかならないんでしょうか……。つけたことはありますが、身近につけたいとは思わないんです。
そうですね。
──重たいですし。
それはまさにそのとおりで。
──メガネぐらいじゃないと難しい。
そう、さっきの小型化、軽量化は結局どこにいくかというと、メガネぐらいじゃないとダメなんですね。
一時期mp3プレーヤーのメガネが出たのって覚えてます? これぐらいまでちっちゃくならないとダメなんですね。これでも大きいんですけど。最悪これぐらいまでにちっちゃくならないとVR・ARの普及はない。
これぐらい小さくならないとだめかなと思ってます。いろんな企業が小型VRを研究されていて、特許の情報などが出てきていたりはしているんですけど、まだまだ時間かかるかな。
──見た目がどうにかならないのかというのは、核心だったんですね。ARとVRって行き着く先は一緒なんですか?
いっしょですね。行き着いたら一緒になっちゃいます。ARはある情報に対して情報を足している形なんですけど、これ発展するとXRにいくと思うんですよ。ARの表示領域をどんどんグレードアップしていくとたぶんそれはXRに。
VRにもARの領域を取り入れたい案が結構実際あったりするんですよ。これも進化すると結局行くところはXRになってくるので、少し最初のベクトルが違うけど最後到達点が一緒になってくるイメージ。
──なるほど。よく言われていたのはVRは視界を塞いでしまうから、ARの方が市場規模がでかくなるみたいなのはニュースでも報道されていたじゃないですか。ARとVRは一体化しますか ?
最終的には一体化すると思いますね。軽量化する、本当にコンパクトになる手前で合わさるんじゃないかなと思っています。
──視界を塞ぐかどうかって選択できそうですもんね。
そうですね。ただ、VRの良さは完全架空であるところです。技術的な到達地点は全部一緒だけれどやりたい表現は若干違うので、多少の棲み分けってのはできると思います。
子どもたちが 3D データを触れる時代
──3Dが本当に一般的になったかなり未来の話だと、子どもとかの発想とかもガラッと変わるんじゃないかなというのは?
子どもたちがデザインできるとか、もっとビルドアンドスクラッチができる。今だと紙でこうやってやるかんじかもしれないんですけど、子どもたちが積み木感覚でCADデータを使い始めたら、おそらくものづくりのレベルまたすごい勢いで上がっていくんじゃないかなと思いますね。
──ティンカーCADっていう積み木みたいな。
そうそう。 VR出始めた頃、 Autodeskさんが123Dデータとか簡単にタブレットでできるようなやつをやっていましたけど。ああいうのが低年齢化して子供でも簡単にできるようになると劇的に変わるんじゃないかなと思います。アイディアを形にするってコスト、カロリーが高い。アイディアをかくということに関してはほぼ簡単にできますけど、それをハードウェアに落としてくるのはけっこう大変なので。そこが簡単になってくる未来は楽しいですね。
最近だと、日本語しゃべる前にiPhoneを操作できる赤ちゃんいるじゃないですか。動画再生する概念、タップの概念を日本語をしゃべる前にわかっている。アンパンマンをタブレットで見る。iPhoneで見ながらタップで止めているんですよ。次の動画にいくってこうやっているんですね赤ちゃんが。
──広告出てきたらサッて上にやりますもんねちっちゃい子が。
ちっちゃい子がやるんですよ。1歳とか2歳とかそういう子がそういうことをできる世代なので、彼らが新卒で入ってサービスを作る頃には、今までの人間が考えてきたサービスとは別のものがメディアというか社会を支えているはずです。3Dモデルをゴリゴリ作って簡単にものづくりできる世界になれば、もっと大きいソリューションが出てくると思います。
最後に
本当はコンシューマ向けでやりたいんですけどね。母体がやっぱりゲームなので。お客さんからの反応が返ってくることの方がやっぱり楽しい。楽しかったとかよかったとか。そこができるようになるためには、まず土壌を整備してそこまで市場を育てるところからがうちの宿命だと思っていますので、今のクリークは市場を作ることをやっています。
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