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3Dプリンター住宅が普及しない理由とは?メリット・デメリットを徹底解説!

近年、建築業界で注目を集めているのが、3Dプリンターで家を建てるという革新的な技術です。

人手不足や建築コストの高騰といった課題を背景に、短期間かつ低コストで建てられる3Dプリンター住宅は、次世代の住まいづくりとして世界中で導入が進んでいます。

日本ではまだあまり馴染みがないこの技術ですが、「本当に住めるの?」「耐震性は大丈夫?」などの疑問を持つ方も多いのではないでしょうか。

本記事では、3Dプリンター住宅の仕組みやメリット・デメリット、国内外の注目事例、そして日本での普及に立ちはだかる課題まで、分かりやすく解説していきます。

この記事で分かること
・3Dプリンター住宅の概要
・3Dプリンター住宅の種類
・3Dプリンター住宅が普及しない理由
・3Dプリンター住宅のメリット
・3Dプリンター住宅のデメリット
・3Dプリンター住宅の事例
・3Dプリンター住宅でよくある質問

未来の住宅のかたちを探るヒントとして、ぜひ参考にしてみてください。

目次

3Dプリンター住宅とは?

3Dプリンター住宅とは?の画像

3Dプリンター住宅とは、3Dプリンター技術を用いて建築される住宅のことを指します。

ここでいう3Dプリンターとは、設計されたデジタルデータをもとに立体物を形成する装置のことです。

特に建築分野で活用される3Dプリンターは、特殊なモルタルをノズルから吐き出しながら水平方向に移動させ、数センチ単位の層を何層にも積み重ねて建造物を形作る大型機器です。

3Dプリンター住宅は3種類

ここでは、3Dプリンター住宅の種類を解説します。

3Dプリンター住宅の種類

①現場施工型:大型3Dプリンターで直接建築するタイプ
②工場生産型:パーツを3Dプリントして現場で組み立てるタイプ
③型枠活用型:3Dプリンターで型枠を作成しコンクリートを流し込むタイプ

現場施工型:大型3Dプリンターで直接建築するタイプ

施工現場に大型の3Dプリンターを設置し、その場で住宅を出力していくタイプです。

曲線を多用したユニークな外観や、卵型のデザインなど、独創的な住宅デザインが実現されています。

SNSなどで見かける印象的な住宅の大半は、この方式によるものです。

工場生産型:パーツを3Dプリントして現場で組み立てるタイプ

この方法では、建材の一部を3Dプリンターを使って工場内で製作し、現場にて組み立てます。

主に装飾部材や外装部品などに3Dプリント技術が使われています。

型枠活用型:3Dプリンターで型枠を作成しコンクリートを流し込むタイプ

こちらは、3Dプリンターで型枠を作成し、そこに鉄筋を配置してからコンクリートを流し込む手法です。

完成後の見た目は通常の鉄筋コンクリート造と変わりませんが、型枠の製造過程に3D技術を導入することで作業の効率化が図れます。

3Dプリンター住宅はなぜ普及しない?

3Dプリンター住宅がなかなか普及しない背景には、複数の要因があります。

まず、日本の建築基準法が従来の工法を前提としており、3Dプリンターによる建築に対する明確なルールが存在しないため、建築許可の取得が難しいことが挙げられます。

また、この技術には高い専門性が求められるものの、対応できる技術者や企業がまだ限られており、使用可能な材料にも制約があります。

さらに、大型の3Dプリンターを導入するためには高額な初期投資が必要であり、コスト面での負担が大きい点も障壁となっています。

加えて、3Dプリンター住宅は一般にはまだ新しい存在であり、長期的な実績や信頼性の面で不安を感じる人も少なくありません。

これらの課題を解決し、法整備や技術の進化が進めば、今後の普及が期待される分野といえるでしょう。

3Dプリンター住宅の主なメリット

3Dプリンター技術を使った住宅建設には、従来の建築方法にはないさまざまな利点があります。

3Dプリンター住宅のメリット

メリット①建築コストの削減
メリット②工期の短縮
メリット③自由なデザインの実現
メリット④環境負荷の低減

ここでは、代表的な4つのメリットについて詳しく解説します。

メリット①建築コストの削減

3Dプリンター住宅は、人手を大幅に減らして施工できるため、人件費が抑えられます。

また、建材の無駄が出にくく、必要な部分だけを効率的に積層していくため、資材コストの面でも有利です。

このように、トータルで見たときの建築費用を削減できる点が大きな魅力です。

メリット②工期の短縮

自動化された出力プロセスにより、従来の工法よりもはるかにスピーディーに建築が進行します。

例えば、壁面の造形や基礎部分などを連続してプリントできるため、数日~数週間程度で家の外枠が完成するケースもあります。

これにより、全体の工期が大きく短縮されます。

メリット③自由なデザインの実現

3Dプリンターはコンピュータ上の設計データをそのまま出力するため、曲線や複雑な形状も容易に再現できます。

これまでの建築では困難だった流線型のデザインや、ユニークな外観の住宅も実現可能で、建物の個性を追求したい人にとって非常に魅力的な選択肢となります。

メリット④環境負荷の低減

必要最小限の材料で建築できるため、建設時に発生する廃棄物が少なく済みます。

また、一部では再生可能な建材や地球にやさしい素材の活用も進められており、持続可能な建築を目指す取り組みにも貢献しています。

環境保全の観点からも注目を集めているのが、3Dプリンター住宅の特長です。

3Dプリンター住宅の主なデメリット

先進的な技術を活用した3Dプリンター住宅には多くの利点がある一方で、導入に際してはいくつかの課題も存在します。

3Dプリンター住宅のデメリット

デメリット①建築基準法への対応
デメリット②施工場所の制限
デメリット③追加工事の必要性
デメリット④使用可能な材料の制限

ここでは代表的な4つのデメリットを解説します。

デメリット①建築基準法への対応

日本では建物を建てる際に建築基準法を遵守する必要がありますが、3Dプリンターを使った建築はまだ制度的な整備が進んでいません。

特に耐震性や耐火性など、安全面での明確な基準が確立されておらず、認可を得るには個別に詳細な審査が必要となる場合があります。

こうした法的な不確実性が、普及の障壁になっているのが現状です。

デメリット②施工場所の制限

大型の3Dプリンターを現場に設置して施工するためには、広いスペースや一定のインフラが整っていることが前提となります。

狭小地や都市部のようなスペースが限られた場所では、機材の搬入や設置が困難なケースもあります。

結果として、施工可能なエリアが制限されやすいという課題があります。

デメリット③追加工事の必要性

3Dプリンターで形成されるのは主に建物の構造体部分であり、水道・電気・ガスといったインフラ設備や内装工事については、従来通りの職人作業が必要です。

そのため、住宅が完成するまでには別途工事を組み合わせる必要があり、完全自動化された「ワンストップ施工」とはなっていないのが現状です。

デメリット④使用可能な材料の制限

現在の建設用3Dプリンターで使用できる建材には限りがあります。

特に、特殊なモルタルなど決められた素材しか利用できない場合が多く、木材や鉄骨といった一般的な建築資材を使った構造との組み合わせには工夫が求められます。

設計や構造に自由度がある一方で、素材面では制限があるというトレードオフが存在します。

3Dプリンター住宅の事例5選

3Dプリンター住宅における各社の取り組みは、建築業界の革新と未来の住まいづくりに大きな影響を与えています。

ここでは、3Dプリンター住宅の事例5選を徹底解説します。

3Dプリンター住宅の事例

事例①セレンディクス株式会社|球体住宅「Sphere」とフジツボ型モデル
事例②株式会社Polyuse|建設用3Dプリンターの技術支援と施工実績
事例③會澤高圧コンクリート株式会社|オンサイト印刷の宿泊施設を建設
事例④大林組|建設基準法認定の3Dプリンター建築と自動化システム
事例⑤清水建設|大型ガントリー型3Dプリンター「Shimz Robo-Printer」

それではここから、1つずつ詳しく解説します。

事例①セレンディクス株式会社|球体住宅「Sphere」とフジツボ型モデル

球体住宅「Sphere」の画像
出典:セレンディクス株式会社

セレンディクス株式会社は、「30年ローンのない住宅社会」を掲げ、3Dプリンター住宅の実用化に取り組む企業です。

代表的な取り組みである球体型住宅「Sphere」は、24時間以内で主要構造が完成し、災害時の仮設住宅や簡易宿泊施設として注目を集めました。

さらに、慶應義塾大学と連携し、より広い空間を持つ「フジツボモデル」の開発も進行中です。

こちらは100㎡クラスで300万円台を目指しており、今後の普及が期待されています。

事例②株式会社Polyuse|建設用3Dプリンターの技術支援と施工実績

株式会社Polyuseの3Dプリンティング建築の画像
出典:株式会社Polyuse

2019年に設立された株式会社Polyuseは、建設業向けの3Dプリンター技術を提供する日本のスタートアップ企業です。

同社の特徴は、現場で直接造形できるオンサイト型の3Dプリンターを開発している点にあります。

国土交通省の「PRISM」事業にも参画し、加藤組と連携して排水構造物の実証を行いました。

さらに2022年には、横浜市のイベント「ハマウェル」にて、国産3Dプリンターによる世界初のサウナを披露しました。

そのほか、吉村建設工業と共同で、国内初となる国道工事への3Dプリンター本格導入も実現しています。

事例③會澤高圧コンクリート株式会社|オンサイト印刷の宿泊施設を建設

會澤高圧コンクリート「グランピング用宿泊施設」の画像
出典:會澤高圧コンクリート

北海道苫小牧市に本社を構える會澤高圧コンクリートは、建設用3Dプリンターを用いたコンクリート構造物の開発で注目されている企業です。

同社は、北海道新冠町にある「太陽の森ディマシオ美術館」の敷地内に、3棟のグランピング用宿泊施設を建設しました。

建物は床面積9.8㎡・高さ2.6mで、ロボットアームによる出力で1日1~2パーツずつ施工しています。

また、2022年からはワイン熟成用のコンクリートタンクの研究にも着手し、新たな建材用途の可能性にも取り組んでいます。

事例④大林組|建設基準法認定の3Dプリンター建築と自動化システム

大林組3Dプリンター実証棟「3dpod」の画像
出典:大林組

大林組は、大手ゼネコンとして初めて3Dプリンターとロボットアームを組み合わせた自動施工システムを開発しました。

セメント系材料を用いた造形で、構造強度の高いプレキャスト部材の製造にも成功しています。

2022年には、建築基準法に基づいて国土交通大臣の認定を受けた3Dプリンター実証棟「3dpod」の建設を開始しました。

この取り組みは、建設分野における3Dプリンターの制度化と社会実装を進める大きな一歩といえます。

事例⑤清水建設|大型ガントリー型3Dプリンター「Shimz Robo-Printer」

清水建設_大型3Dプリンター「Shimz Robo-Printer」
出典:清水建設

清水建設は、現場での自動施工を想定して設計された大型3Dプリンター「Shimz Robo-Printer」を開発しました。

このプリンターは、奥行25m・幅7.2m・高さ12.5mのスケールを持ち、埋設型枠の3D出力とコンクリート打設を同時に行うことが可能です。

すでに自社施設内での検証も終えており、省人化・省力化が求められる建設業界において、次世代の施工技術として期待が高まっています。

まとめ

本記事では、3Dプリンター住宅の概要や種類、なぜ普及していないのかを徹底解説しました。

また、3Dプリンター住宅のメリット・デメリット、実際に建てられた事例なども合わせて紹介しています。

3Dプリンターを使って住宅を建てることで、「施工期間の短縮」や「建築費用の削減」といった魅力的な効果が期待されています。

しかし、「基礎工事や電気・水道といった配管工事に対応しづらいこと」や、「建築基準法への適合が難しい」といった課題も存在します。

これらの対応には時間や費用がかかるため、現在の日本においては、3Dプリンター住宅の持つポテンシャルを十分に発揮できていないのが実情です。

特に、日本のように地震が多い国では、建築基準法の規制が厳しく、大幅な法改正がすぐに進む可能性は低いと考えられています。

そのため、まずは主要構造に該当しない外構や仮設建築物などから、導入が現実的な選択肢となるでしょう。

もちろん、まだまだ多くのハードルが残されているのは事実ですが、将来に向けてこの分野に大きな可能性があることも間違いありません。

技術の進化と制度整備の進展により、近い将来、3Dプリンター住宅がより一般的な存在になることに期待したいところです。

3Dプリンター住宅でよくある質問

ここでは、3Dプリンター住宅でよくある質問を一問一答形式で紹介します。

Q1:3Dプリンター住宅の価格帯はどのくらい?

3Dプリンターを使った住宅の価格は、仕様や規模によって異なりますが、小型のものであれば数百万円台から建築可能な事例も出てきています。

一般的な住宅に比べて人件費や材料の無駄が抑えられるため、コスト面でのメリットがあります。

Q2:3Dプリンターで作られた住宅の耐用年数は?

耐用年数については、使用される材料や設計条件によって異なりますが、適切なメンテナンスを行えば、従来の住宅と同程度の耐久性が期待されるとされています。

特にコンクリート系の3Dプリント住宅では、数十年単位での使用を想定して設計されています。

Q3:3Dプリンター住宅でも住宅ローンは利用できる?

3Dプリンター住宅でも、建築確認が取れており、法的に住宅として認定されていれば住宅ローンの利用は可能です。

ただし、金融機関によっては審査基準が異なるため、事前に対応可能なローン商品や金融機関を確認しておくと安心です。


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