プロ・アマ問わず多くのMaker(メイカー)が集まるモノづくりの祭典「Maker Faire」。3Dプリンターを活用したモノづくりもたくさん出展されていると聞いて、モノづくりの刺激を得るために実際に行って来ました!
「Maker Faire Tokyo(メイカーフェア・トウキョウ)」とは?
皆さんは「Maker Faire Tokyo(メイカーフェア・トウキョウ)」というイベントをご存知でしょうか。
Maker Faire Tokyoは、誰でも使えるようになった新しいテクノロジー(カードサイズで3,000円で買えるコンピューター、センサー、3Dプリンター、ロボット、AI、VRなど)をユニークな発想で使いこなし、皆があっと驚くようなものや、これまでになかった便利なものを作り出す「Maker(メイカー)」が集い、展示とデモンストレーションを行うイベントです。
(公式サイト開催概要より抜粋)
Maker Faire Tokyoは、ただ見るだけのイベントではありません。ハンダづけ入門やプログラミング入門をはじめとしたワークショップも、多数用意され、実際にものを作る体験を行うことも可能です。
毎年夏に東京ビッグサイトで開催される、ものづくりをする人たち、Makerの祭典です。
「3Dプリンターを扱ったサービスを提供する会社として、同じMakerとして、このイベントは見逃せない!」と思い実際に行ってきました!
この記事では、3Dプリンターを活用したものづくりをしている人たちを中心に、実際に伺った話を交えながらそのアイデアの斬新さなどを解説しています。3Dプリンターのものづくりに興味がある人、アイデアが出なくて困っている人などにとって、刺激となる内容でしょう!
1.キモカワ! 3Dプリンターでバジェットガエル作り!
皆さんは「マルメタピオカガエル」、通称「バジェットガエル」をご存知でしょうか? 爬虫類ブームの中で人気を誇った、キモかわいいカエルです。
D.GEEK.LABの阿部(Twitter : @galliano)さんは、3Dプリンターを活用してソフトロボット版バジェットガエルを制作していました。
3Dプリンターで型を制作し、そこにシリコンを流し込むことでカエルのパーツを作るという活用方法でした。カエルに繋がれた管から空気を注入すると、カエルが動いたり鳴いたりする仕組みです。
制作理由を伺うと、奥さんがバジェットガエルが好きだから制作したと語っていました。
Maker Faire Tokyo終了間際に発見し、少しお話を伺ったあとにバジェットガエルのフィギュアをいただきました。特徴的な目が可愛いです。
2.チョコの食感をコントロールする3Dプリンター技術
3Dプリンターでチョコレートを作る研究をされているFab Imagineer ありずむさん(Twitter : @wk9ry)の出展です。
3Dプリンターは、モデルを出力する前にスライサーと呼ばれるソフトで、モデルを3Dプリント可能な状態に変換します。そのときに出てくる「充填密度」という設定を利用した研究です。
充填密度は0から100%まで変えることができます。0%であれば中身は空洞、100%であれば中身が詰まったモノが出力されます。0と100の間の数値であれば、数値に基づいた密度で、ハニカム構造や格子状に中身が形成されて出力物の強度に影響を与えます。
その充填密度をチョコレートに応用して、チョコレートの食感や舌触りをコントロールする研究です。残念ながら実食はできませんでしたが、充填密度とパターンによって、食感や舌触りが変化すると説明されていました。
今後はより3Dプリンターらしい3次元構造での制作や、被験者に実際に食べてもらって食感を比較してもらう実験などをしていく予定だそうです。
3Dプリンターの可能性を感じさせられた出展でした。
3.もはや職人技! カメラのレンズを3Dプリンターで自作
こちらは、カメラのレンズを3Dプリンターで自作した猛者、高田徹さんの作品です。自作したレンズで撮影された写真を何枚か展示していたのですが、とても不思議な空気感を切り取った幻想的な写真でした。
制作したレンズをブースでいくつか販売していたそうですが、私がブースに行ったときにはこの白のレンズひとつしか残っていませんでした。黒のものは全て売れてしまったそうです。
白のフィラメントで作られたこちらのレンズだと、光が乱反射してしまうためあまり撮影には向かないとのことでした。
詳しい制作プロセスや撮影された写真などに関しては、こちらで詳しくまとめられているのでぜひとも読んでみてください。STLデータも配布されているそうなので自分で作ってみたい方はチャレンジしてみてはいかがでしょうか。
4.3Dプリンターで新たな楽器作り! 驚異の高校生Maker
近年、テクノロジーのコモディティ化が著しいですが、高校生ですでに3Dプリンターを使ったモノづくりをしている方がいました。
作っていたのは、リコーダーとトロンボーンの構造を組み合わせた「リボーン」という新しい楽器です。自身がリコーダーを吹くのが苦手だった経験から、このアイデアを思いついたそうです。
制作者本人様からとても丁寧に説明していただき、将来が非常に楽しみな高校生でした。彼が所属されている工学院大学付属中学校・高等学校にあるFabスペースでは、生徒によるモノづくり活動が活発におこなわれているそうなのでぜひチェックしてみてください。
「リボーン」に関する制作プロセスは、こちらに詳細がまとめられています。何度も失敗しながら試作を繰り替えしており、その熱意に驚かされました。
5.看護師だからこそできる現場に寄り添ったモノづくり
Maker Faire Tokyoには様々な背景をもったMakerたちがいます。こちらの出展では、慶應義塾大学の看護系学生が3Dプリンターを使って制作したモノが出展されていました。
看護×3Dプリンターという、あまり馴染みのない組み合わせかもしれませんが、作られたモノはどれも、患者や看護師のニーズに寄り添ったモノばかりでした。
例えばこちら。なんとこれ、直腸の一部を3Dプリントしたものです。半透明で中が透けて見え、排泄物を指でかき出す練習に使えます。
他には、ペットボトルに取り付けられるピルケースも制作されていました。つい飲むのを忘れがちな薬を、ペットボトルとセットにすることで忘れにくく、探す手間も省けるという便利なアイテムです。それ以外にもたくさんのアイテムを制作されていました。
データと3Dプリンターさえあれば、どこでも同じものを作れるのが3Dプリンターのいいところ。しかし、医療の現場においてはその制作物で何か万が一のことが起きた時に誰が責任をとるのかという問題があるそうです。
また、3Dプリントされたものには積層痕というものがあり、その小さな溝に菌がたまる危険性もあると話されていました。
画期的なアイデアを実際に多くの人に使用してもらうには、まだもう少し時間がかかるかもしれませんが素晴らしいモノづくりでした。
他の作品についてはこちらの慶應義塾大学宮川研究室FabNurseProjectのホームページから見ることができます。
6.リハビリを楽しく彩るカラフルな自助具
カラフルでまるでオモチャ屋のような雰囲気のこちらのブース。なんと、これらはすべて障がいのある方などが日常生活を送りやすくするための、自助具なんです。
例えばこれは、車椅子のブレーキを延長するアタッチメントです。片手が不自由な人などが、もう片方の手で左右両方のブレーキを操作しやすくするためのものです。
持ち手部分と棒部分を取り外すことができ、様々な形状にカスタマイズすることができます。
こちらはペットボトルの蓋を開けやすくするアタッチメントです。実際に販売もされていました。
なぜ自助具がこんなにカラフルに作られているかを伺うと、「自助具を使う人が楽しく生活を送れるように」という思いがこめられているそうです。見ているこちらまで楽しい気分になってきますね。
これらの自助具の制作方法などを紹介した本が発売されているので、自分で自助具作りにチャレンジしてみたい方はチェックしてみてください。
※番外編1 ライブ中は猫の手も借りたい!? エフェクターを手元で操作する猫ちゃん
こちらはIIJ様の出展で、遠くのエフェクターをギターのストラップ等に取り付けたリモートスイッチから遠隔操作する「ネットワーク・ストンパー」を作っていました。
エレキギターの音色を変えるエフェクターという機材。エフェクターはペダルのように踏むとスイッチのON・OFFが切り替えられるので、ギターの演奏中でも足で操作して音色を変化させることができます。
しかし、それではどれだけステージが広くても、ギタリストはエフェクターの前からは離れられないという欠点もあります。その欠点を、IoTの力で解決しようという取り組みです。
手元のスイッチを押すと、エフェクターの前にいる猫が動いて指定のエフェクターを操作してくれます。
まさしく、ライブ中のエフェクター切り替えは「猫の手も借りたい」ということでしょう。
番外編で紹介したのは、この猫が3Dプリントされたものだったからです。可愛い。
こちらからプロジェクト詳細を見ることができます。
※番外編2 3Dプリントしない3Dプリンターの使い方
最後はオン・セミコンダクターさんの、見た瞬間思わず笑ってしまいその発想に驚かされた3Dプリンターの使い方です。
こちら、一見普通の3Dプリンターに見えます。
しかし、なんとノズルが付いていません……!(写真は少しわかりにくいですが赤丸部分です)
3Dプリンターにはノズルが付いていて、そこからフィラメントを出して造形するのが常識なのに、ノズルが付いていない!
なんとこちら、UFOキャッチャーだそうです。最初は理解が追いつかないでしょう。3Dプリンターからノズルを外し、本来造形物を冷却するためについていたファンを手元で制御可能にして、吸い込むようにモノを持ち上げるのです。
ファンの位置はXYZそれぞれの軸で操作することができ、造形テーブルに並べられたステッカーのところまで移動させます。狙いを定めてファンの稼働スイッチを押すと、ファンがステッカーを吸い込む方向に回転し始めます。
「本当にとれるの?」と思われるかもしれませんが、案外簡単にとることができます。筆者は楽しくなって2回チャレンジさせてもらい、ステッカーを2枚ゲットしました。
「そんな使い方ありかよ!」と思いましたが、ユニークな使い方であることは間違いありません。
まとめ
いかがだったでしょうか? Maker Faire Tokyoには独創的な発想と、それを実現する技術をもったたくさんのMakerたちがいました。3Dプリンター分野以外の出展は、記事の趣旨のために省いてしましましたが、面白いモノづくりをするMakerは他にもたくさんいました。
皆さんも機会があれば、また次のMaker Faireに訪れてみてください。次回は筑波にて、TSUKUBA MINI Maker Faireがある模様です。
参照:Maker Faire Tokyo 2019
撮影:都
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