3Dプリンターは、使用する素材によって造形の仕上がりや強度、用途が大きく変わります。
一般的なプリンターにおけるインクのように、3Dプリンターでも「素材選び」が非常に重要なポイントとなります。
造形方式によって適した材料も異なり、それぞれの特性を理解したうえで目的に応じた素材を選ぶことが求められます。
本記事では、FDMやSLAなどの主要な造形方式ごとに対応する素材の種類を紹介し、ABSやPLA、TPUといった定番樹脂から、金属や石膏、ゴムライク素材まで、全13種類を徹底解説。さらに、造形をサポートする補助材(サポート材)の選び方や、素材ごとの価格相場についても分かりやすく解説しています。
3Dプリントの品質や効率を高めたい方は、ぜひ参考にしてください。
3Dプリンターで使用する素材とは?
3Dプリンターで使われる素材は、一般的なプリンターにおける「インク」に相当する重要な要素です。
使用する素材の種類は、プリンターの造形方式に応じて異なり、それぞれの用途や目的に合わせて選ぶ必要があります。
代表的な造形方式と、それに対応する主な材料は以下のとおりです。
・SLA/DLP(光造形方式):紫外線で硬化する液状の樹脂(レジン)
・インクジェット方式:ワックスや特殊ポリマーなどの液体材料
・粉末焼結方式(SLSなど):ナイロンや金属などの微細な粉末
これらの材料は、強度・柔軟性・精密さ・加工後の仕上がりなどの性能に違いがあります。
そのため、どのようなモノを製作したいのかに応じて、最適な素材を選ぶことが大切です。
3Dプリンターで使用できる材料と素材全13種類を徹底解説
ここでは、3Dプリンターで使用できる材料と素材全13種類を徹底解説します。
・ABS樹脂
・PLA樹脂
・TPU
・PP樹脂
・ナイロン樹脂(ポリアミド樹脂)
・PC樹脂(ポリカーボネート)
・液体樹脂(レジン)
・アクリル樹脂
・PETG
・エポキシ系樹脂
・石膏
・金属
・ゴムライク
それではここから、1つずつ詳しく紹介します。
ABS樹脂

剛性や耐衝撃性、耐薬品性に優れ、工業用でもよく使われる素材です。
PLAに比べ柔軟で加工しやすく、塗装や研磨も可能です。
ただし、プリント時に収縮しやすく、反りや臭いの発生がデメリットです。
- 用途:自動車部品、フィギュアなど
- 対応方式:FDM
PLA樹脂

植物由来(とうもろこし・サトウキビなど)の再生可能資源から作られた樹脂で、初心者にも扱いやすい素材です。
比較的低温(180〜230℃)で出力でき、臭いや煙も少ないのが特長です。
仕上がりも美しく、価格も安価なため幅広く使われています。
ただし、衝撃や高温に弱く、約60℃で変形しやすい点には注意が必要です。
ゴムのような弾性と柔らかさを持つ素材で、衝撃吸収や柔軟性が求められる用途に最適です。
- 用途:試作品、模型、玩具など
- 対応方式:FDM(熱溶解積層方式)
TPU
耐摩耗性も高いですが、造形がやや難しい点が特徴です。
- 用途:靴底、スマホケースなど
- 対応方式:FDM
PP樹脂

軽量で柔軟性があり、耐薬品性や絶縁性にも優れる汎用プラスチックです。
自動車や食品包装など多用途に利用されています。
ただし、変形しやすいため扱いには技術が必要です。
- 用途:治具、包装材、自動車部品など
- 対応方式:FDM、SLS(粉末焼結方式)
ナイロン樹脂(ポリアミド樹脂)

機械強度と耐熱性に優れ、衝撃や摩耗にも強いエンジニアリングプラスチックです。
高温での出力に対応し、変形しにくいですが、湿気を吸いやすく保管環境に注意が必要です。
- 用途:機能試作、工具、治具など
- 対応方式:SLS、FDM
PC樹脂(ポリカーボネート)
高い透明性と衝撃耐性を持ち、精密性や耐熱性も高い高性能樹脂です。
価格は高めですが、自動車・医療・航空機などでも使用されています。
- 用途:強度を求めるパーツ、工具など
- 対応方式:FDM
液体樹脂(レジン)
高精細な造形が可能で、耐薬品性・耐熱性・電気絶縁性に優れた液体樹脂です。
光造形で使われ、表面が滑らかに仕上がりますが、有機溶剤が含まれるため取り扱いには注意が必要です。
- 用途:展示用模型、外観確認用パーツ
- 対応方式:SLA(光造形)
アクリル樹脂

透明性が高く、細部まで表現可能な素材です。寸法精度が高く、短時間で硬化します。
ただし、表面は傷がつきやすく衝撃にはやや弱めです。
- 用途:フィギュア原型、精密パーツなど
- 対応方式:SLA
PETG
PETに柔軟性を加えた素材で、強度・耐熱性・透明性に優れます。
ABSとPLAの長所を併せ持ち、プリント中の反りも少なく扱いやすいです。
- 用途:冶具、透明パーツ、機械部品など
- 対応方式:FDM
エポキシ系樹脂
高精細な造形が可能で、耐薬品性・耐熱性・電気絶縁性に優れた液体樹脂です。
光造形で使われ、表面が滑らかに仕上がりますが、有機溶剤が含まれるため取り扱いには注意が必要です。
- 用途:展示用模型、外観確認用パーツ
- 対応方式:SLA(光造形)
石膏
造形速度が速く、着色性に優れる一方、強度が低く、表面にザラつきが出やすいため後処理が必要です。
- 用途:医療モデル、鋳型の原型など
- 対応方式:インクジェット
金属

チタン・ステンレス・アルミ合金などの金属を粉末化し、焼結して造形します。
自由な形状で高機能パーツを製造できる一方、コストは高めです。
- 用途:航空機、医療機器、自動車部品など
- 対応方式:SLS(金属粉末焼結)
ゴムライク

ゴムに似た柔軟性を持つレジンで、質感の再現や微細な表現に優れます。
積層間の接着力が高く、引っ張っても剥がれにくいのが特長です。
- 用途:ゴム部品試作、スタンプなど
- 対応方式:インクジェット、SLA
3Dプリンターのサポート材とは?
3DプリンターでT字やH字、円形など空中に浮いた構造を持つモデルを作る際には、『サポート材』と呼ばれる補助材料が必要です。
これは、出力中に形が崩れないように支える役割を担っています。
使用するサポート材の種類は、3Dプリンターのノズル構成によって異なります。
シングルノズル(1本の押出機)を搭載した機種では、本体の素材をそのまま支えとしても利用します。
一方、デュアルノズル(2本の押出機)タイプなら、造形材料とは別の専用サポート材を使うことが可能です。
このサポート材の除去のしやすさは、仕上がりの精度や美しさに大きな影響を与えるため、初めから複雑な形状を作成することがわかっている場合は、専用のサポート材が使えるデュアルヘッドタイプの導入を推奨します。
というのも、造形素材をそのまま支えに使う場合、除去作業が手間取りやすくなるためです。
サポート材にもいくつかの種類がありますが、特に取り外しの手軽さを重視する場合は、水で簡単に溶かせる「水溶性タイプ」がおすすめです。
複雑な形状を3Dプリンターで出力する際には、サポート材の活用が不可欠です。
3Dプリンターで使用する素材の価格相場は?
3Dプリンターで使用される素材の価格は、その素材の種類によって大きく異なります。
1kgあたり2,000円未満のリーズナブルなものから、10万円を超える高価な素材まで幅広く存在します。
以下では、代表的な造形方式ごとに使用される樹脂素材の種類と、そのおおよその価格帯をご紹介します。
造形方式 | 使用される主な素材 | おおよその価格(1kg) |
熱溶解積層方式(FDM) | PLA、ABS、ASA、PP、TPU、PETG、ナイロン、PCなど | 2,000円〜10万円程度 |
光造形方式(SLA/DLP) | エポキシ樹脂、アクリル樹脂、レジン、柔軟素材 | 2,000円〜4万円前後 |
インクジェット方式 | レジン、ワックス、ゴムライク、石膏系素材 | 約6万円〜 |
粉末焼結方式(SLS等) | ナイロン、PP、金属パウダーなど | 約1万円〜 |
一般的に、3Dプリンター本体の価格が高くなるにつれて、使用できる素材のバリエーションも増えていきます。
高性能なプリンターでは、高機能かつ高価格な素材を扱えるケースが多く、製品の性能に直結します。
まとめ
3Dプリンターで使われる素材は、その特性や対応方式によって多種多様です。
例えば、PLAやABSは扱いやすさから初心者向けとされ、TPUやナイロンなどは柔軟性や強度が必要な用途に最適です。
一方で、レジンやアクリル系素材は高精度な表現が可能で、模型やフィギュア制作に重宝されています。
また、金属素材を使った粉末焼結方式では、工業用の高性能パーツの製作も可能です。
さらに、複雑な形状を支えるための「サポート材」や、素材ごとの価格帯も押さえておくべきポイントです。
特にデュアルノズル機では水溶性のサポート材が使用可能となり、後処理の手間が軽減されます。
素材の選定は、3Dプリンターの性能を最大限に引き出す鍵です。
造形目的に合わせて、最適な材料と方式を選ぶことで、仕上がりや効率に大きな差が生まれます。

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