AR(拡張現実)は、「Augmented Reality」の略で、現実世界にデジタル情報を重ね合わせる技術です。
近年、VR(仮想現実)と並んで注目を集め、ビジネスやエンターテインメント、日常生活のさまざまな場面で活用されています。
特に、業務効率化や顧客体験の向上に貢献する技術として、ドミノ・ピザやIKEAといった多くの企業が導入を進めています。
ARを活用することで、作業の精度向上、情報の可視化、インタラクティブな体験の提供が可能になり、新たな価値を生み出せるのです。
この記事では、ARの概要や特徴、歴史を徹底解説します。
また、ARとVR・MRの違い、ARの種類や仕組み、活用事例まで詳しく紹介します。
・ARの概要
・ARの歴史
・ARとVR・MRの違い
・ARの種類や仕組み
・ARの活用事例
・ARの未来と展望
目次
AR(拡張現実)とは?

AR(拡張現実)とは、「Augmented Reality」の略で、現実の環境にデジタル情報を重ねて表示し、新たな体験を生み出す技術です。
スマートフォンやタブレット、ARグラスなどを使って簡単に利用でき、現実の景色と仮想オブジェクトを融合させることが特徴です。
この技術を活用することで、現実には存在しない映像や画像、3Dキャラクターなどを視界に追加することが可能になります。
ゲームや教育、観光、広告など、多岐にわたる分野で活用が進んでおり、例えば、ゲームのキャラクターを現実世界に投影したり、歴史的建造物の過去の姿を再現したり、家具の配置をシミュレーションするといった用途があります。
代表的な事例としては、Google検索で動物のARモデルを表示する機能が挙げられます。

検索した動物をスマートフォンのカメラを通して現実世界に投影し、本来のサイズ感を確認できる仕組みです。
やり方は簡単で、まず「猫」とGoogle検索します。※一応「虎」などのキーワードでも3Dモデルが表示されました。
その次に、3Dと表示されている箇所の「実物大のアメリカン・ショートヘアを近くで見る」をタップします。
するとアメリカン・ショートヘアの3Dモデルが表示されます。
2025年現在は、iPhone・スマホなどの端末でしか3Dモデルは表示されず、PCでは表示されないので注意が必要です。
ARは「XR(クロスリアリティ)」の一種で、現実世界と仮想情報を融合させる技術の一つとして注目されています。

特に、2016年に世界的ヒットとなったスマートフォン向けゲーム「ポケモンGO」で広く認知されました。
現在では、エンターテインメントだけでなく、インテリア、ファッション、マーケティング、製造、物流、建設など、多様な業界で実用化が進んでいます。
AR(拡張現実)の歴史
近年、実用化が進んでいるAR技術ですが、その概念自体は100年以上前から存在していました。
アメリカの劇作家であり、『オズの魔法使い』の著者として知られるライマン・フランク・ボームが、1901年に発表した小説『マスターキー』の中で、ARグラスに類似したデバイスを描写しており、これがARの原型と考えられています。
時代が進み、現在のAR技術の礎が築かれたのは1990年代のことです。
アメリカのアームストロング空軍研究所が開発したパイロット訓練用デバイス「Virtual Fixtures」や、コロンビア大学が手掛けたレーザープリンターのメンテナンス支援システム「KARMA」では、すでにARヘッドセットが活用されていました。
さらに、1990年代後半には、アメリカンフットボールのテレビ中継で、フィールドラインをプレイ映像に重ねる技術が導入され、これも広義のARとして認識されています。
2000年代に入ると、ARを活用したゲームやスマートフォンアプリが次々と登場。特に『ポケモン GO』の大ヒットが、AR技術の急速な普及を後押ししました。現在では、ARはゲームやエンターテインメントだけでなく、教育・医療・ビジネスなど、さまざまな分野で日常的に活用されています。
ARとVR・MRの違いを徹底比較
ARは、冒頭で触れたように「XR(クロスリアリティ)」技術の一種です。
XR技術には、ARのほかにもVR(仮想現実)やMR(複合現実)が含まれます。
ここでは、それぞれの違いについて詳しく説明します。
ARとVR(仮想現実)の違い
VRは「Virtual Reality」の略で、日本語では「仮想現実」と訳されます。
VRヘッドセットを装着すると、現実世界の視界が遮断され、デジタル上に構築された仮想空間をあたかも現実のように体験できます。
この技術の最大の特徴は、ユーザーが仮想空間内に没入できる点にあり、現実の環境にデジタル情報を重ねるAR(拡張現実)とは異なります。
近年では、オンライン上に構築された『メタバース』と呼ばれる仮想世界へアクセスする手段としてもVRが注目を集めています。
ARとMR(複合現実)の違い
MR(Mixed Reality)は、日本語で「複合現実」と訳される技術です。
AR(拡張現実)と同様に、現実世界にデジタル情報を重ねて表示しますが、MRはより高度な要素を取り入れている点が特徴です。
たとえば、ARではテキストや2Dの映像を視界に追加することが一般的ですが、MRでは3Dオブジェクトを現実空間に実際に存在するかのように配置でき、手や視線の動きで操作可能になります。
MRは比較的新しい技術であり、現在は発展途上ですが、今後はエンタメ業界だけでなく、ビジネス分野でも大きな役割を果たすと期待されています。
ARの種類やその仕組みとは?
ここでは、ARの種類やその仕組みを徹底解説します。
①ロケーションベース型AR
②ビジョンベース型AR
③マーカー型AR
④マーカーレス型AR
それではここから、ARの種類や仕組みを1つずつ詳しく紹介します。
①ロケーションベース型AR
ロケーションベース型ARは、スマートフォンなどのGPS機能を活用し、取得した位置情報に基づいてデジタルコンテンツを表示する技術です。
さらに、磁気センサーや加速度センサーを組み合わせることで、ユーザーの動きや向きを検知し、現実空間と連動した情報を提供します。
この技術の特徴は、ユーザーの現在地とデジタルデータを結びつける点にあり、ゲームだけでなく、観光ガイドやナビゲーションシステムなど幅広い分野で活用されています。

代表的な活用例としては、位置情報を活かしたゲーム「ポケモンGO」「Ingress」「ドラゴンクエストウォーク」などが挙げられます(いずれもマーカーレスAR技術も組み合わせて使用)。
ゲーム以外では、「Googleマップ」がARナビゲーション機能「ARナビ」を導入し、話題を集めました。
②ビジョンベース型AR
ビジョンベース型ARは、スマートフォンのカメラなどを利用して取得した映像やマーカー情報をもとに、周囲の空間を解析し、その空間内にデジタルコンテンツを重ね合わせて表示する技術です。
空間の認識手法によって、以下のように『マーカー型AR』と『マーカーレス型AR』に分類されます。
③マーカー型AR
マーカー型ARは、特定の図形(マーカー)を現実空間に設置し、それをカメラで認識することでデジタル情報を表示する技術です。
マーカーの準備が必要なため、事前の設置作業が発生しますが、仕組み自体はシンプルで、さまざまな環境で活用しやすいのが特徴です。

この方式の代表的な例としては、携帯ゲーム機『ニンテンドー3DS』で採用されたARカードが挙げられます。
④マーカーレス型AR
マーカーレス型ARは、スマートフォンのカメラなどで捉えた実際の風景を解析し、その環境に適したデジタル情報を重ねて表示する技術です。
マーカーを設置する必要がない点が大きな利点ですが、高度な画像認識技術が求められます。

この技術を活用した代表的なアプリには、室内に仮想家具を配置できる「IKEA Place」や、多彩なエフェクトが話題のカメラアプリ「SNOW」などがあります。
ARの活用事例
ここでは、ARの活用事例を各分野に分けて紹介します。
教育分野での活用
医療分野での活用
エンターテインメントでの活用
マーケティング・広告での活用
それではここから、1つずつ徹底解説します。
教育分野での活用

AR技術は教育や学習の分野でも活用が進んでいます。
その代表例の一つが、新潟医療福祉大学と、VR・AR・MRなどの先端技術とコンテンツの融合を目指す開発会社Gugenkaが共同開発した『心肺蘇生AR』です。
このシステムでは、ARスマートグラスを使用し、目の前の任意の場所に心肺停止状態の傷病者アバターを表示できます。
これにより、心臓マッサージやAEDの使用手順を実践的に学習可能となりました。
従来はマネキンを用いた学習が主流でしたが、ARによる3DCG化により、心停止直後のリアルな状況を再現可能になっています。
マネキンでは表現が難しかった細かな動作や状況理解が、より深く学べるようになりました。
医療分野での活用
AR技術の進化により、遠隔手術の精度が飛躍的に向上しました。
医師は患者の体内構造を視覚的に把握しながら処置を行えるため、より正確で安全な手術が可能になります。
加えて、熟練した外科医が遠隔地にいる場合でも、ARを通してリアルタイムで指示を出しながら手術を支援できるようになりました。
これにより、医療の地域格差の縮小にも貢献しています。
また、ARによる遠隔手術の実装に伴い、新しく手術をサポートするシステムも開発・リリースされています。

「Proximie」は、イギリスで開発されたAR手術支援システムです。
このシステムを活用すれば、遠隔地の専門医がリアルタイムで執刀医に助言を行い、手術をサポートできます。
具体的には、遠隔の医師がARヘッドセットを装着し、360度パノラマ映像を通じて手術室の様子を確認します。
そして、執刀医の視界に直接指示を重ね合わせることで、切開するべき箇所や注意が必要なポイントをリアルタイムで伝えられる仕組みです。
この技術により、専門医が不足している地域への医療提供が可能となり、世界中での医療アクセスの向上が期待されています。
エンターテインメントでの活用

ソニー・ミュージックレーベルズが新たに発表した「ReVers3:x(リバースクロス)」は、独自の仮想空間を活用したショートライブプロジェクトです。
このプラットフォームでは、多彩なアーティストによるライブをバーチャル空間内で楽しめます。
このプロジェクトの第1弾として、ラッパーのKEIJUによるライブが配信されました。
東京のストリートをモチーフにした仮想ステージには、デジタルアーティストが手掛けたアートが施され、音楽だけでなく視覚的にも楽しめるコンテンツとなっています。
マーケティング・広告での活用

大手宅配ピザチェーンのドミノ・ピザは、スマートフォンのカメラを活用したAR(拡張現実)アプリを提供しています。
このアプリでは、注文予定のピザが実寸大で画面に表示され、自宅のテーブルや部屋のスペースに適したサイズかどうかを事前に確認できます。
さらに、同社は「世界のチーズを巡る旅」というAR体験を提供し、ユーザーがチーズに関する知識を深めながら、新商品をより楽しめる仕組みを導入しました。
このAR体験は、専用アプリをインストールすることなく、Webブラウザ上で利用可能な「Web AR」技術を採用しています。
そのため、広告やプロモーションコンテンツとして手軽に体験できる仕様になっています。
特設サイトやチラシのQRコードからARページにアクセスすると、画面上に地球儀が表示され、世界各国のチーズの名産地が浮かび上がります。
ユーザーは各産地のチーズの特徴やおすすめの食べ方を学べるだけでなく、実際のチーズピザの購入にもつながるプロモーション施策となっています。
ARの未来と展望
AR技術は今後、スマートグラスの進化、5GとAIの発展、メタバースとの融合によって大きく進化すると予測されます。
現在はスマートフォンが主流ですが、軽量で高性能なスマートグラスが普及することで、日常生活での活用が一般化すると予想されています。
5GとAIの進歩により、リアルタイムで高精度なAR体験が可能になり、作業効率の向上やインタラクティブな操作が実現します。
また、メタバースとの連携が進めば、バーチャル会議や遠隔教育など、現実と仮想が融合した新たなコミュニケーションが生まれます。
医療分野では、手術支援や遠隔医療への応用が期待され、医療の質向上に貢献すると考えられます。
さらに、買い物、ナビゲーション、翻訳など日常生活の利便性も向上し、より直感的な体験が可能になります。
まとめ
本記事では、AR(拡張現実)の概要や歴史、VR(仮想現実)やMR(複合現実)との違いを徹底比較しました。
また、ARの種類や仕組み、活用事例も詳しく紹介しています。
ARは、現実の環境にデジタル情報を重ねて表示し、新たな体験を生み出す技術のことを指します。
スマホやタブレット、ARグラスを用いることで誰でも簡単に現実の景色と仮想オブジェクトを融合させられます。
2025年現在、ARは教育分野・医療分野・エンタメ、マーケティング分野と広い分野で活用されています。
今後は、メタバースとの融合で『バーチャル会議』『遠隔教育』などが可能になり、新たなコミュニティが形成されると予想されています。

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